論理回路(Logic)は負論理/反転思考が基本

電子工学を学び始めて論理回路について勉強を始める場合、多くはAND / OR といった正論理記号から学び始めるとおもいます。

論理演算の意味を理解する上で都合がよく、真理値表もしくはカルノー図も素直な結果となるので理解しやすいです。

しかし、実際に設計を行っていくうえでこの正論理でなれた思考はしばしば壁に当たります

それは実際の設計においては負論理/反転思考が基本で正論理/正転思考はあまり用いないからです。

 

理由はいくつかありますが根本は至極シンプルです。

AND / ORといった論理回路(Logic)はトランジスタ(or FET)で構成されています。

トランジスタはNPN型 / PNP型問わず、一般的な使用法であるエミッタ接地回路はベース入力に対して増幅率を伴った信号増幅を行いますので、微細な入力をより大きな信号振幅に変換する動きがあります。 ただしベースの動きに対して信号の動き=論理は反転する特徴があります。

ベースの動きに対して出力論理を同じにする方法としてはコレクタ接地(エミッタフォロワ)がありますが、こちらは論理回路には向きません。

なぜならコレクタ接地はベース信号の波形をインピーダンス変換することが目的であり増幅率が1であることから、信号がゆっくり変化する入力はそのまま出力も同じような変化をしますのでアナログ動作になってしまうためです。

デジタル回路は途中の配線やノイズの影響を受けて信号が鈍ったものでも論理を通過するときにシャープな信号に変換するからこそノイズに強い回路を構成できるからであり、そのためにはエミッタ接地を基本とした回路で構成し信号のスイングをより大きな変化にする必要があります。

 

つまり、デジタル回路においては負論理で構成するのがもっとも簡単となり、正論理出力を得るにはもう一度反転動作のトランジスタを通過させないと論理を得られないことになります。

 

これは実際のロジックICやLSI設計において重要で、負論理回路は使用するトランジスタ数が少なく速度が速いという特性があり正論理回路はその逆となります。 デジタル回路設計はコストとのせめぎ合いでもありますので、速度的に不利でコストがかさむ方法を取ることは合理的ではありません。

必然的にひとつの論理を通過する際には反転・反転…と負論理の組み合わせで考えていく必要があります。 それがコスト的に速度的に有利だからです。

 

一例として、Texas Instruments社の公開している74LS TTLデータシートから代表的な74LS00(NAND)74LS08(AND)の遅延速度を比較してみると

74LS00 tpLH=15ns(Max) / tpHL=15ns(Max)

74LS08 tpLH=15ns(Max) / tpHL=20ns(Max)

負論理ロジックのほうが速度的に優位であることがわかります。

 

また、演算という側面で考えると正論理のみではいくらどのように重ねても負論理を作り出すことが出来ないというデメリットがあります。

ANDはいくら重ねてもANDにしかならず、ORはいくら重ねてもORにしかなりません。

逆に負論理はもう一度負論理を重ねると別の正論理回路に変化させられるというメリットがあります。

前述のように正論理回路は反転動作のトランジスタを二度通過した結果とするならば、それは負論理回路を二度通過したのと同じであり、より必要トランジスタを少なく且つバリエーションに飛んだ設計を可能とすることが出来ます。

 

この考えは算術の世界にも言えることで、足し算・正の数字しかない世界はなにも生み出すことは出来ません。大小の比較・目的の数字という考えは引き算によって成立しており、また引き算が無ければ割り算も生まれません。また負の数字は負の数字で掛ければプラスとなりますので、負の数字だけで四則演算のすべてを実行できます。

 

一般社会ではネガティブ思考は良くない…と言われますが、こと論理の世界ではポジティブ思考よりネガティブ思考の方がよりクリエイティブであるといえます。

 

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